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ベトナム、サイゴンビール(SAB)株価と今後の見通しレポート

投稿日:2025-05-29 更新日:

Part 1: ベトナム、サイゴンビール(SAB)株価と今後の見通しレポート

1. はじめに:サイゴンビール(SABECO)とは

Saigon Beer – Alcohol – Beverage Corporation、通称「Sabeco」は、ベトナムの飲料業界において揺るぎない地位を確立している企業です。ホーチミン証券取引所(HOSE)に「SAB」の証券コードで上場しており 、その市場における存在感は非常に大きいと言えます。1875年に創業されたSABECOは、1世紀半近い歴史を誇り 、ベトナムにおけるビール生産のパイオニアとしての役割を果たしてきました。この長い歴史は、単なる時間の経過以上の意味を持ちます。それは、ベトナム市場におけるSABECOの深い根付き、強力なブランド認知、そして長年にわたる消費者からの揺るぎない信頼を意味します。特に、新規参入企業や海外ブランドとの競争が激化する市場において、この歴史的背景と確立されたブランドロイヤルティは、SABECOの持続的な競争優位性となり得ると考えられます。  

同社の主要ブランドである「Bia Saigon(サイゴンビール)」と「333 Beer」は、ベトナム国内で広く親しまれており 、2011年にはベトナム国内のビール市場で51.4%という圧倒的なシェアを占め、12億リットルのビールを生産していました 。  

SABECOはかつてベトナム貿易産業省の管轄下にありましたが、現在はタイの飲料大手ThaiBevの子会社となっています 。ThaiBev傘下のVietnam Beverage Company LimitedがSABECOの53.6%の株式を保有する筆頭株主です 。ThaiBevがSABECOの過半数株式を保有していることは、単なる所有権以上の戦略的意味合いを持ちます。ThaiBevは地域の大手飲料企業として、SABECOに強力な資本力、先進的な生産技術、広範な流通ネットワーク、そして地域市場に関する深い洞察を提供できる可能性があります。これは、SABECOが直面する規制強化や市場競争といった課題を乗り越え、将来の成長を追求する上で非常に重要な支援となり得ます。実際、ThaiBevは2024年にSABECOから1.37兆VND(約5482万ドル)の配当を受け取る予定であり 、2017年末のSABECO買収以来、初期投資の11%に相当する12.03兆VND(約4.7967億ドル)もの配当を受け取っています 。これは、SABECOがThaiBevにとって安定したキャッシュフロー源となっていることを明確に示唆しており、ThaiBevのSABECOへの長期的なコミットメントの表れと捉えることができます。  

さらに、SABECOは2024年12月に地元のビール会社Sabibeco Groupの株式59.6%を取得し、子会社化しました 。この買収は、SABECOの市場リーダーシップを強化し、生産能力を大幅に拡大する明確な戦略的動きです。これにより、SABECOの年間生産能力は合計30.1億リットルに増加し、主要競合他社に対する優位性をさらに固めることになります 。これは、成長するベトナムビール市場における将来の需要増加に対応し、競合との差を広げるための積極的な投資と解釈できます。  

2. SABECOの株価動向と財務健全性

SABECOの株価は、2025年5月28日時点で49,450 VNDで取引されています 。直近の24時間での変動は0.00%と安定しているものの 、長期的な株価パフォーマンスは厳しい状況にあります。過去1年間で株価は-15.76% 、過去5年間では-43.42% と大幅に下落しており、年初来でも-11.38%の下落を記録しています 。  

52週間の株価レンジは41,500 VNDから64,786 VNDであり 、2025年4月8日には史上最安値の41,500 VNDを記録しました 。一方で、史上最高値は2017年11月29日の173,500 VNDでした 。  

興味深いことに、SABECOは2024年に堅調な財務実績を報告しています。2024年通期の売上高は31.87兆VND(約12.7億ドル)に達し、前年比4.6%の増加を達成しました 。また、税引後利益は4.49兆VND(約1.792億ドル)となり、前年比5.6%の増加を記録しました 。このように、2024年に売上高と税引後利益がそれぞれ4.6%と5.6%増加し、堅調な財務実績を示しているにもかかわらず、過去1年、5年、そして史上最高値からの大幅な株価下落(特に直近の史上最安値更新)は、市場がSABECOの現在の好調な業績よりも、将来の逆風(後述の規制強化や増税など)を強く織り込んでいることを示唆しています。これは、投資家が短期的な利益よりも、長期的な市場環境の変化による収益性への影響を懸念している証拠と捉えることができます。  

SABECOの現在の時価総額は63.42兆VNDです 。EPS(1株当たり利益)は3,122.99 VND 、PER(株価収益率)は15.8倍となっています 。同業他社平均の16.3倍と比較して同水準ですが、セクター平均の11.6倍よりは高い評価を受けています 。  

SABECOは株主還元にも積極的であり、配当利回りは10.11%という高い水準です 。2024年については、当初の35%から50%への現金配当の引き上げが提案されています 。10.11%という高い配当利回りと、2024年の50%現金配当提案は、株価が低迷する中で投資家の信頼を維持し、バリュー投資家を惹きつけるための戦略である可能性が高いです。これは、SABECOが厳しい市場環境下でも潤沢なキャッシュフロー(2021年9月30日時点で18.65兆VNDの現金及び短期金融投資を保有 )を維持していることの証左であり、財務的な健全性を示しています。しかし、成長が鈍化する市場で高配当を維持することは、将来的な再投資余力を圧迫する可能性も示唆しており、成熟企業としての位置づけを強める側面もあります。  

SABECOの次期決算発表日は2025年7月24日とされています 。  

SABECO主要財務指標サマリー

指標 データ(2025年5月28日時点) 備考
証券コード SAB ホーチミン証券取引所上場
現在株価 49,450 VND
時価総額 63.42兆VND
52週高値 64,786 VND
52週安値 41,500 VND 2025年4月8日に記録
1年間の株価変化率 -15.76%
5年間の株価変化率 -43.42%
2024年売上 31.87兆VND 前年比4.6%増
2024年純利益 4.49兆VND 前年比5.6%増
EPS(1株当たり利益) 3,122.99 VND
配当利回り 10.11% 2024年50%現金配当提案
次期決算発表日 2025年7月24日

 

3. ベトナムビール市場の現状とSABECOの競争力

ベトナムは世界的に見ても有数のビール消費国であり、その市場は今後も堅調な成長が見込まれています。ベトナムのビール市場は、2024年に78.9億米ドルと評価され、2033年までに148.5億米ドルに達すると予測されており、2025年から2033年の予測期間で年平均成長率(CAGR)7.27%で成長すると見込まれています 。ベトナムは世界で9番目に大きいビール消費国であり、世界の総市場シェアの2.2%を占めています 。アジアでは中国と日本に次ぐ3番目のビール消費国であり 、2024年の年間消費量は380万キロリットルを超え 、一人当たりの年間ビール消費量は43〜46リットルに及んでいます 。  

しかし、この成長市場は非常に競争が激しく、Heineken Vietnam、Sabeco、Habeco、Carlsberg Vietnamの4社が市場の90%以上を占める寡占状態にあります 。特に注目すべきは、市場シェアの変動です。  

ベトナムビール市場シェア推移(2018-2024年)

Heineken (%) Sabeco (%) Habeco (%) Carlsberg (%) その他 (%)
2018 34.0 42.0 11.4 5.5 7.4
2019 36.2 41.0 9.8 5.8 7.2
2020 38.9 38.8 9.0 6.7 6.6
2021 38.6 38.6 8.8 6.2 7.8
2022 45.0 34.6 7.2 7.8 6.8
2023 43.0 33.9 7.9 9.2 6.4
2024 37.0 34.0 11.0 8.0 N/A

 

上記のテーブルが示すように、SABECOは2018年には42%の市場シェアで首位でしたが、2020年から2021年にかけてHeinekenにその座を奪われ 、2023年には33.9%までシェアを落としました 。2024年には34%と横ばいですが、Heinekenは37%と依然としてSABECOを上回っています 。ベトナムビール市場全体が堅調な成長予測を示しているにもかかわらず、SABECOの市場シェアが減少傾向にあることは、市場全体の成長の恩恵をSABECOが十分に享受できておらず、競合他社、特にHeinekenがより効果的に市場の成長を取り込んでいることを示唆しています。これは、SABECOが単に市場成長に乗るだけでなく、失われたシェアを取り戻すための積極的な戦略が不可欠であることを意味します。  

市場の主要ドライバーとしては、若年層人口の増加、可処分所得の向上、都市化の進展、そして社交の場への需要増加が挙げられます 。これらの要因は、今後もビール消費を牽引すると見られています。  

一方で、市場のトレンドも変化しています。特に注目されるのは、プレミアム・クラフトビールへのシフトです。都市部の若年層を中心に、高品質で多様なビールへの需要が増加しており、2022年には消費者の88%がより高品質なビールに多く支出する意向を示しています 。このプレミアム化の動きは、SABECOにとって大きな機会であると同時に課題でもあります。消費者が高付加価値製品に支出する意向があることは、高単価製品による収益性向上への道を開きます 。SABECOが「333 Pilsner」のプレミアム版導入 や、「World’s Best Light Lager 2024」を受賞した「Bia Lac Viet」のリニューアル でこのトレンドに対応しようとしているのは評価できますが、これらの製品が市場でどれだけ浸透し、利益に貢献できるかが、今後の競争力回復の鍵となるでしょう。  

また、低アルコール・ノンアルコールビールの人気も高まっています 。さらに、飲酒運転規制(Decree 100)の影響で、レストランやバーなどのオンプレミス販売が大幅に減少(2017-2022年で55%減)する一方、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、Eコマースなどのオフプレミス販売が80%増加し、今後も年間7.5%の成長が見込まれています 。このオフプレミス消費の台頭は、SABECOが伝統的な流通チャネルだけでなく、Eコマースやモダンリテールへの投資を加速させる必要性を示しています。  

4. SABECOの成長戦略と今後の見通し

SABECOは、厳しい市場環境の中でも持続的な成長を達成するため、明確な戦略を打ち出しています。同社は2025年に、売上高31.64兆VND(約12.6億ドル)、税引後利益4.835兆VND(約1.94億ドル)を目標としており 、これは2024年の5.6%増益 に続き、8%の利益成長を意味します 。この目標は、規制や競争といった厳しい市場環境を考慮すると野心的な目標と捉えることができますが、SABECOが自社の戦略的柱と具体的な取り組みが成長を加速させるという強い自信の表れと解釈できます。  

2024年の成功を支え、2025年以降の成長を牽引するSABECOの主要な戦略的柱は以下の3つです 。  

  1. 商業的卓越性(Commercial Excellence): SABECOは、データ駆動型マーケティングへの投資と、ベトナムのアイデンティティに根ざしたブランドイニシアチブを通じて、市場浸透の強化を図っています 。消費行動の変化に対応するため、モダンリテールおよびEコマースチャネルの強化にも注力しています 。製品ポートフォリオの最適化の一環として、プレミアム製品「333 Pilsner」を導入し 、さらに「World’s Best Light Lager 2024」を受賞した「Bia Lac Viet」のリニューアルを実施しました 。これらの取り組みは、消費者のプレミアム志向に応え、高付加価値製品による収益性向上を目指すものです。  

  2. サプライチェーンと生産効率(Supply Chain & Production Efficiency): 物流、調達、倉庫管理システムへの投資を通じて、サプライチェーンの近代化とコスト効率の改善を進めています 。特に、Sabibeco Groupの買収は、SABECOの年間生産能力を大幅に増加させ、合計30.1億リットルに達しました 。これは単なる能力増強だけでなく、市場シェアの維持・拡大に向けた具体的な行動であり、目標達成へのコミットメントを示しています。2024年11月にはビール研究開発センター(SRC)を正式に開設し 、新醸造技術の開発と高品質で革新的な製品の提供を目指しています。  

  3. ESG(環境・社会・ガバナンス)へのコミットメント: SABECOは、太陽エネルギーの利用拡大や水効率の改善など、環境面での取り組みを強化しています 。また、従業員エンゲージメントの促進やコーポレートガバナンスの強化にも力を入れており、2024年には「ベトナムの持続可能な企業トップ100」および「コーポレートガバナンス優良企業トップ10」に選出されました 。ESGへのコミットメントは、単なる企業の社会的責任に留まらず、運用コスト削減(太陽エネルギー利用など) やブランドイメージ向上、ひいては投資家からの評価を高める戦略的な意味合いを持ちます。持続可能性への取り組みは、長期的な企業価値向上に貢献し、競争優位性を確立する上で重要です。  

SABECOは、ブランドポートフォリオの最適化と刷新、国内外での流通強化、そして新しい世代の消費者にアピールするためのブランド構築とイノベーションに引き続き注力する計画です 。  

アナリストによるSABECOの株価予測では、5人のアナリストによる全体的なコンセンサスは「買い(Buy)」であり 、内訳は「買い」4人、「ホールド」1人、「売り」0人です 。アナリストによる12ヶ月の平均目標株価は59,840 VNDであり 、現在の株価からのアップサイドは+17.1% または+20.89% と予測されています。TradingViewのアナリスト予測では、最大68,300 VND、最小54,000 VNDとされています 。しかし、テクニカル分析では、当日、1週間、1ヶ月のいずれも「売り」シグナルを示しています 。アナリストの「買い」コンセンサスと目標株価は、SABECOのファンダメンタルズ(基礎的価値)と長期的な戦略を評価していることを示唆しています。一方で、TradingViewのテクニカル分析が示す短期的な「売り」シグナルは、直近の株価動向や市場のモメンタムが弱気であることを示唆しています。この乖離は、SABECOの株価が、企業の長期的な成長ポテンシャルと、短期的な市場のセンチメントや規制環境の逆風との間で揺れ動いていることを表しています。  

SABECO 2025年主要目標と成長戦略

項目 目標/戦略内容 関連する取り組み
2025年財務目標 売上高: 31.64兆VND (約12.6億ドル) <br> 税引後利益: 4.835兆VND (約1.94億ドル) <br> 利益成長率: 前年比8%増 2024年の堅調な成長(利益5.6%増)を踏まえた野心的な目標
成長戦略の柱 商業的卓越性 <br> サプライチェーンと生産効率 <br> ESGへのコミットメント 2024年の成功を牽引した3つの戦略的柱を継続
製品革新の例 プレミアム製品「333 Pilsner」導入 <br> 「Bia Lac Viet」リニューアル (World’s Best Light Lager 2024受賞) 2024年11月にビール研究開発センター(SRC)開設
サプライチェーン改善 物流、調達、倉庫管理の近代化と効率化 <br> Sabibeco Group買収による生産能力拡大 (年間30.1億リットルへ) コスト効率改善と市場シェア維持・拡大を目指す
ESGへの取り組み 太陽エネルギー利用拡大、水効率改善 <br> 従業員エンゲージメント、ガバナンス強化 2024年「持続可能な企業トップ100」「コーポレートガバナンス優良企業トップ10」選出
市場拡大戦略 国内外での流通強化 <br> モダンリテール・Eコマースチャネルへの投資 変化する消費行動への適応と新たな収益源の確保

 

5. 課題とリスク要因

SABECOは、ベトナムビール市場におけるリーダーシップと堅固な財務基盤を持つ一方で、いくつかの重要な課題とリスク要因に直面しています。これらの要因は、同社の将来の成長と収益性に影響を与える可能性があります。

最も大きな課題の一つは、政府規制の影響です。

  • 飲酒運転規制(Decree 100): 2020年1月1日に施行されたこの法律は、飲酒運転に対するゼロトレランスポリシーを導入し、ベトナムのビール業界に壊滅的な影響を与えました 。施行後、ビール販売は25%減少し、一部のバーでは顧客数が80%減少したと報じられています 。これにより、レストランやバーなどでのオンプレミス(店内飲食)販売は2017年から2022年の間に55%以上減少しました 。この規制は2024年も引き続き業界に影響を与えており 、消費行動の根本的な変化を促しています。  
  • 広告制限: アルコール広告に対する政府の制限も、市場の成長を阻害する課題として挙げられています 。  

次に、物品税の増税計画が挙げられます。ベトナム政府は、高い物品税率を通じてビールの消費を抑制する方針を打ち出しており 、財務省は、現在の65%(2018年以降適用)の物品税率を、2030年までに段階的に100%まで引き上げる計画を立てています 。この増税は、2026年から2030年の間に業界の付加価値を最大62兆VND減少させると予測されており 、SABECOを含むビール業界全体にとって、一時的なものではなく、長期的な構造的課題を提示しています。これらの規制は直接的に消費量(特にオンプレミス)と収益性(高価格化、付加価値の減少)に影響を与えます。  

さらに、原材料費の高騰もSABECOを含むビール業界全体の収益性を圧迫する課題です 。  

消費行動の変化も重要なリスク要因であり、同時に機会でもあります。

  • オンプレミスからオフプレミスへのシフト: Decree 100の影響により、消費者は自宅や非ライセンス施設での消費を好み、スーパーマーケットやEコマースを通じたオフプレミス販売が急増しています 。オフプレミス販売は2017年から2022年で80%増加し、今後も年間7.5%の成長が予測されています 。SABECOがEコマースやモダンリテールへの投資を強化し 、新たな収益源を確保することは、これらの規制による影響を緩和するための不可欠な戦略です。  
  • プレミアム化とクラフトビールへの需要: 若年層や都市部の消費者の間で、可処分所得の増加と国際的なビール文化への接触により、プレミアムビールやクラフトビールへの需要が高まっています 。これは、SABECOが高単価製品で収益性を向上させる機会を提供しますが、同時に「予算最適化の傾向」 が示唆するように、消費者は日常消費では依然として価格に敏感です。消費者の52.3%が飲料に35,000VND(約1.37ドル)未満の支出を優先しており 、この二面性は、SABECOが多様な価格帯と品質の製品ポートフォリオをバランス良く管理し、異なる消費者セグメントに対応する必要があることを意味し、マーケティングと価格設定戦略の複雑さが増します。  
  • 低アルコール・ノンアルコールビールの人気も高まっています 。  

最後に、競争激化も重要な課題です。Heineken、Sabeco、Habeco、Carlsbergといった主要プレーヤーが市場の大部分を占め、激しい競争が繰り広げられています 。  

ベトナムビール市場の主要課題とSABECOへの影響

課題/リスク要因 具体的な内容 SABECOへの影響 SABECOの対応策(もしあれば)
飲酒運転規制 (Decree 100) 飲酒運転に対するゼロトレランス政策の導入 。ビール販売25%減、バー顧客80%減 。オンプレミス販売55%減 。 消費量減少、特に飲食店チャネルでの売上低迷。 オフプレミス(Eコマース、モダンリテール)チャネルへの投資強化 。
物品税増税計画 2030年までに税率65%から100%へ段階的引き上げ計画 。業界付加価値最大62兆VND減少予測 。 製品価格上昇、消費者購買力低下、収益性圧迫。 製品ポートフォリオの最適化、高付加価値製品へのシフト 。
原材料費高騰 グローバル経済の変動による原材料コストの上昇 。 生産コスト増加、利益率圧迫。 サプライチェーンの近代化と効率化によるコスト削減 。
消費行動の変化 プレミアム化/クラフトビール需要増: 消費者の88%が高品質ビールに支出意向 。<br> 低/ノンアルコールビール人気増 。<br> 予算最適化傾向: 52.3%が飲料に35,000VND未満を優先 。 ポートフォリオ戦略の複雑化、多様なニーズへの対応必要。 プレミアム製品(333 Pilsner、Bia Lac Viet)導入 。研究開発センター開設 。
競争激化 Heinekenが市場シェア首位を奪取、寡占市場での激しい競争 。 市場シェア維持・拡大の困難さ。 Sabibeco買収による生産能力拡大と市場地位強化 。ブランド構築と市場開発の強化 。

 

6. 結論と投資推奨

サイゴンビール(SABECO)は、ベトナムビール市場における長年のリーダーシップとThaiBevという強力な後ろ盾を持つ、堅固な基盤を築いている企業です 。2024年には、飲酒運転規制や原材料費高騰といった厳しい市場環境にもかかわらず、売上高と税引後利益で着実な成長を達成し 、その回復力と運用効率の高さを示しました。この増益実績は、単なる幸運ではなく、厳しい規制環境下でSABECOが示した運用上の回復力と、市場変化への迅速な適応能力の証です。  

同社は、商業的卓越性の追求、サプライチェーンの近代化、ESGへのコミットメントという3つの戦略的柱を掲げ、製品革新(ビール研究開発センター開設 、プレミアム製品導入 )や市場拡大(Sabibeco買収 )に積極的に投資することで、将来の成長基盤を強化しています 。ビール研究開発センターの設立やSabibecoの買収といった積極的な戦略的行動は、経営陣が課題を認識し、将来の成長のために能動的に投資していることを示しており、これは企業の長期的な持続可能性にとって極めて重要です。SABECOは株主還元にも積極的であり、高水準の配当を維持しています 。  

しかし、SABECOは、飲酒運転規制の厳格化や物品税の段階的増税といった、ベトナムビール業界全体が直面する構造的な逆風に晒されています 。これらの課題は、短期的な株価の重しとなり、市場シェアの変動にも影響を与えています。  

それでもなお、同社の強固な市場地位、戦略的な適応能力、そしてアナリストの「買い」コンセンサス(平均目標株価59,840 VND、現在の株価からのアップサイド約20%) は、長期的な視点で見れば魅力的な投資機会を示唆しています。アナリストの「買い」推奨と目標株価は、SABECOのファンダメンタルズと成長戦略への信頼を反映していますが、直近の株価パフォーマンスやテクニカルな「売り」シグナル は、市場が短期的な逆風を強く意識していることを示唆しています。この乖離は、SABECOへの投資が、短期的な投機ではなく、企業の長期的な適応能力と市場回復への信念に基づく戦略的な判断であることを意味します。  

投資推奨: 厳しい外部環境下でも成長戦略を推進し、株主価値を重視するSABECOは、ベトナム市場における長期的な成長ポテンシャルを信じる投資家にとって、注目に値する銘柄です。ただし、規制リスクや競争激化といった課題を十分に理解し、中長期的な視点での投資を検討することが重要です。



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広島在住のサラリーマン。
米国、日本、ベトナムの個別株・ETF・投資信託をMIXして長期運用しています。


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